歩歩是道場

今月5日に死去した米アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、若いころインドに旅して仏教に触れ、1970年代にカリフォルニア州の禅センターに通って、日本出身の禅僧、故・乙川弘文氏と交流を深めたといわれています。禅の教えには、あのスティーブ・ジョブズ氏のライフスタイルを変えるほどの魅力があったのでしょうね。

さて今日は、「ふっと心がかるくなる 禅の言葉」より、「歩歩是道場」をご紹介させていただきます。

歩歩是道場 (ほほこれどうじょう)

素直な心さえあればどこでも学びの場

会社勤めをしながら、行き帰りの通勤電車内の勉強で司法試験に合格した人がいました。携帯電話のメール機能だけを使って小説を書き上げ、新人賞を取った人がいました。

夢を持っていても、場所や環境などいろいろな条件が自分に不利だからと言って(またはそれを言い訳にして)、あきらめてしまう人が多いものです。

この禅語のもとの話はこうです。

あるとき、閑静な修行の場を探していた修行僧が、街に向かおうとやってきた維摩居士(ゆいまこじ)に出会い、「あなたはどこから来たのですか。」と訊くと、「道場から来たのだ。」と返ってきました。

「えっ、その道場はどこにあるのですか。」と訊きかけると、維摩居士はすかさず「直心是道場(じきしんこれどうじょう)と答えました。「まっすぐな心を持っていれば、どんなところでも道場、すなわち修行の場である。」と。

修行の場はそれぞれの心の内にあるのだから、場所など関係ない、そのすることなすことの一歩一歩が仏法修行なのだということです。雑念を払い無心に打ち込めば、どんな条件であっても自分を磨いたり夢に近づくことができるはずです。

恩師である故・久留島先生の門下に入った頃、「行き帰りの電車の中で、ボーッとしてたらあかん。目の前にはたくさんの人がいるんやから、しっかりと観察しなさい。そして、身体の中がどうなっているのかをイメージしなさい。」と、よくおっしゃいました。

そして、「みんなと同じように電車に乗っていたら、それは普通の人。一流の治療師になりたければ、電車の中も勉強の場。」と、教えられました。その教えがあって、今では患者さまが治療室に入って来られる姿を見ただけで、「どこにトラブルを起こしているのか?」が、わかるようになりました。

ですが・・・残念なことに、まだまだ一流の治療師にはほど遠いです(^_^;)